透析におけるバスキュラーアクセス不全を早期発見するための3つのポイントとは?

透析

困った人

新人透析MEクン「VAの評価に超音波検査がメッチャ重要なのは分かったんだけど、エコー検査なんかそんな頻繁にできないよね?
エコー以外で評価するとしたらどういう方法があるのかな?」

こんな疑問に答えていきます。

超音波検査なしでもバスキュラーアクセス不全は色々な方法で発見可能。
いずれの方法も日常的に使える知識やテクニックとなりますので、しっかり理解しておきましょう。

バスキュラーアクセス不全を早期発見するには?

超音波検査は、普段見えない部分を抽出できるため非常に有用な検査ではありますが、患者の時間的負担や保険の兼ね合いでそんなに検査することはできません。

普段の観察(触診・聴診)が非常に重要ではありますが、他にもVA不全を見抜く方法はあります。

  • 透析開始時の脱血状態
  • 採血データからVA不全を見抜くにはCrとKt/Vが重要
  • BV計でVA不全はよく分かる

各々を深掘りしていきます。

透析中の脱血状態を観察しろ

透析回路には脱血状態を示すピローが付いているものもありますが、実血流量から-10%くらいでも正直ピローはパンパン。
ということで脱血状態の監視にピローはあんまり使えない・・・流路障害となって血栓ができちゃったりとかするので、なくてもいい存在だと思います。

透析開始時の観察

透析開始時には、患者動脈側からプライミング液(多くは透析液)が流れ込んでこないかのチェックをしましょう。再循環があれば患者A側回路から血液とプライミング液の混じった薄い血液が出てくる事がわかったりします。

開始時に再循環所見が認められたら、静脈側穿刺部を再穿刺するなどの処置が必要です。

透析中の観察

Aチャンバ圧力PBiのある回路であれば、この数字がいつもと変わらないかは脱血の指標となり得ます。

また、血液回路のバックフロー(しゃくり)も脱血不良を示す一つの要因。

透析回路の圧は、血液ポンプ手前が陰圧ゾーン、ポンプ以降は陽圧ゾーン。
ローラーポンプを平面模式するとわかりやすいですが、設定血流量に対し実流量が下回った場合は、血液ポンプ手前が強い陰圧となります。

ローラーポンプ手前の強い陰圧ゾーンが血液ポンプ以降に解放されることで、陰圧により引っ張られる現象(逆流・回路のバックフロー)が起こります。

採血データからVA不全を見抜くにはCrとKt/Vが重要

ほとんどの透析施設が月に2回ほどの定期採血を行い、適切な患者の状態管理に努めています。

BUN・P・Kなどは透析間の食事内容に大きく左右されるデータのため、脱血不良を示すデータとしては信頼性には欠けます。

Crは長期透析評価に向いた値

Crは簡単に言えば筋肉を動かすことで産生される老廃物。

生活リズムや運動の傾向が変わらないのにCrが徐々に上昇傾向
» 透析におけるCrのクリアランスが低下してきている
» 脱血不良の存在を予見させる

Kt/Vは1回の透析除去の指標 脱血不良などのシャント不全がもろに影響する値

Kt/Vってただの数式。

K:尿素クリアランス
t:透析時間
V:体液量

透析条件(クリアランス・透析時間)が変わらずに、体格の変化もない安定した患者であれば、Kt/Vは同じような値で推移するのが当たり前。

採血月 1月 2月 3月 4月
Kt/V 1.78 1.72 1.21 1.19

こんな推移を辿っているのであれば、2月の採血後から3月の採血前までの間に何かしら効率が下がるイベントが起き始めたと考えられます。

透析時間は変えていない
» 体格の変動もない
» クリアランスの下降を意味する

クリアランスは透析膜と血流量で決まる

透析膜を変えていないなら血流量が落ちたということは明白ですね。ここでいう血流量とは設定血流量ではなく、実際に流れている実血流量のコト。
バスキュラーアクセス不全による脱血不良を疑うことができます。

Kt/Vについて詳しくは »「 透析量HDP vs Kt/Vを徹底考察!生命予後に有用な指標はどっち? 」で紹介しています。

BV計でVA不全はよく分かる

これはBV計搭載機種で毎回サンプリングしている患者さんに使える方法。
BV計でVA不全はよく分かる
BV波形は除水量などである程度バラつきはありますが、②のように一気に%BV値が下降する場合は、脱血不良や再循環などのバスキュラーアクセス不全と見ることができます。

除水した血液が再循環して脱血される
» 濃縮が一気に進む
» %BVが一気に下降

BV計では1時間当たりのBV減少率で報知設定可能。
-15%を危険領域とするならば-4%/hrあたりで報知設定を作ることで

  • 危険な除水設定の回避
  • バスキュラーアクセス不全の発見

こんなことが可能。

VA不全はBV波形の減少率とリンクする

除水停止時のBV波形の変化でも再循環を確認する方法もあります。

①のBV波形のようにリフィリング速度を明らかに超えた%BV値の上昇を認めた場合は、再循環であることも明白。
詳しくは » 「日機装社製BV計は安全な透析をする上で最適!DW設定・リフィリング・再循環測定もOK」で解説しています。

全機種にBV計が搭載されていなくても、VAチェックやDWチェック用に数台保持しておくことは、透析施設にとってはメッチャ大事。
患者をベッド移動させて定期的にBV波形を管理していくことが大事です。

バスキュラーアクセス不全を早期発見する方法 まとめ

わかった気がするMEクン

わかった気がするMEクン「エコー検査をしなくても採血データ・脱血状態・BVでVA不全を見抜くことはできるんだね。BV計はうちの病院にはないんだけど、病院内で相談してちょっと入れてもらえるように頑張ってみようかな」

バスキュラーアクセスは質の高い透析を提供する上で非常に重要です。

バスキュラーアクセス不全を放置することで、患者さんの生命リスクを脅かしていることを理解することが大事。

普段の透析中の情報には隠れたVA不全を見つけるためのヒントがたくさん隠されていますので、見逃さないよう心がけて透析医療を行なっていきましょう。