透析における膜間圧力差TMPの考え方と対処方法【新人さん必見】

悩める新人MEクン「透析コンソールに表示されているTMP。これってどんな意味があるの?静脈圧と除水速度と血圧だけ見てればそれで全然大丈夫じゃん?」
こんな疑問に答えていきます。
膜間圧力差TMP、結論から言うととっても重要。
TMPを理解することで透析中の血液回路の状態や透析膜(ダイアライザ・ヘモダイアフィルタ)の状態がわかります。
この記事では透析従事歴の短い看護師・臨床工学技士向けに、TMPについて網羅的に解説。
本記事の内容
- 膜間圧力差TMPとは?
- 透析膜の透水性
- TMP警報の意味と対処
膜間圧力差TMPとは?
TMPは血液側と透析液側の圧力差を示します。
透析液側を血液側より陰圧にすることで、限外濾過で水を引く、これが透析の除水の原理となります。
TMPの計算式
TMP=(PBi+PBo)/2-(PDi+PDo)/2
PDi:透析液入口圧 PDo:透析液出口圧
血液側圧力:(PBi+PBo)/2
透析液側圧力:(PDi+PDo)/2
TMPは何を表す指標?
計算式から分かるとおり、TMPは血液側と透析液側の圧力差を表します。
水分は圧力が高い方から低い方に移動します。
透析による除水は、機械的に透析液側圧力を血液側より陰圧にすることで行います。
TMPを一定にすることで、除水速度を均一にコントロールしてるんですね。
TMPの正常値?
TMPには基本的に正常値という概念はありませんが強いていうなら
OnlineHDFでは二桁後半くらいまで
OnlineHDFで条件をきっつきつに詰めていけばTMP100~200なども行きますが・・・
まぁTMPが上がれば上がるほど、Albなど栄養成分が抜けて行ってしまうこともありますので、栄養状態管理が重要です。
TMPは基本的に陽圧
透析コンソールの設定で、TMPが陰圧表記されている設定もたまに見受けられますが、原理上TMPは陽圧です。
TMPが陰圧に触れるのは、I-HDF時の間歇補液時くらいと考えればOK。
透析膜の透水性
透水性の指標を参考までに紹介。
あまり詳しく覚えても臨床ではほとんど価値はありません。
知っているとドヤ顔できる?できません。
Lp
Lp(hydraulic permeability)は透水性指標の1つ。
Lp=Vf/(Tf・TMP・A)
Tf:濾過時間(hr)
TMP:膜間圧力差(mmHg)
A:膜面積(㎡)
1時間当たり膜面積1㎡当たりどれだけ水が引けるか、と言う指標ですね。
TMPがコントロールされることで濾液量Vfが上がりますので、除水速度を早めることでTMPが上がることが理解できますね。
UFRP
限外濾過率と呼ばれます。
UFRP=Vf/(TMP・Tf)=Lp・A
これも透水性の指標の1つです。
透水性指標Lpと膜面積Aを乗算しているため、膜面積が大きいほど透水性が上がる(UFRPが大きくなる)ことがわかりますね。
TMP警報の意味と対処
TMPは基本的に一定。
一定ではあるのですが、透析膜の透水性がおちることでTMPは上昇します。
透水性の落ちる原因
- 膜近傍のタンパク凝集などによる流路阻害
- 濾過量過多による膜の目詰まり
- 血液濃縮
これらが原因となり、血液から水を抜きにくくなっていくため、さらに圧力差を作って除水速度を均一に保ちます。
基本的には経時的に膜状況が悪くなっていくため、透析後半に起きやすい症状です。
TMP上限警報
ダイアライザ・ヘモダイアフィルタによって、TMPの限界値が違ったりしますのでイメージでお伝えします。
透析前半のTMPよりも50〜100mmHgほど上がってきたのであれば、膜の劣化が進んでいるため何かしらの対応をしておくべきです。
補液量を減らす(濾過量を減らす)
TMP高値によるAlb漏出リスクを減らすためには、TMPを下げてあげることが最優先。
血液透析ではTMP上昇などは凝固関連以外ほとんど見られないとは思いますが、OnlineHDFではまぁまぁ見かける症状。
毎回のようにTMPが上がって補液量を下げる処置をするようでは、ヘモダイアフィルタとOnlineHDFの条件が合っていない証拠。
膜面積を上げたり、種類を変えたりする必要があります。ここはMEの腕の見せ所ですね。
TMP下限
あんまりみないケースです。
静脈圧や透析液圧は普段からフラフラ動いてはいますので、何かのタイミングで透析液圧が先に上昇することでTMP下限警報が出ることがないとは言えないかもです。
TMPがマイナスに触れて解除できないような時は、液圧センサー故障なども疑えますので、すぐさま治療中止。
結論

わかった気がするMEクン「TMPで除水の制御をしてるわけだね。よくわかった。
TMPは基本安定していて、透析後半に膜の透水性が下がるとTMPが上がってくるわけだ。
OnlineHDFの患者さん多いから、気をつけてみてみるよ!」
それだけわかればもう十分。
過度なTMPの上昇を放置していたら患者さんの栄養状態の悪化を招くリスクがありますので、しっかりケアしていきましょう。