浸透圧って難しい?透析におけるプラズマリフィリングを理解しておこう

透析

困った人

透析新人MEクン「浸透圧って腹膜透析の原理としてよく聞くんだけど、リフィリングにも関わってるんだよね。
透析でちゃんと覚えておくべき浸透圧について教えてよ。」

水の移動を司る圧力、浸透圧について解説していきます。

理論としては中学校レベルの理科で説明がつく話ではあります。ですが血液透析においても腹膜透析においても、その基礎となる大事なモノ。

浸透圧で水は移動する

浸透圧が高い方から低い方へ水が移動する

これは当たり前の原理ですね。

ダブルプールモデルで人間の体液分布を2分画

人間の体液を2区画とみなしたモデル。
シングルプールやトリプルプールなど様々な体液分画モデルがありますが、ダブルプールで考えるのが一番簡単。

血漿と細胞内(細胞内液と細胞間質液を総称)に分けて考えます。
血漿と細胞内液のダブルプールモデル
血中の溶質濃度や浸透圧が変動すると、結晶と細胞内で溶質や水の移動が起こり、時間の経過とともに平衡状態に達すると考えましょう。

  • 溶質:濃度差で移動
  • 水:浸透圧で移動

腹膜透析の原理は浸透圧で説明できる

腹膜透析の原理
腹腔に高浸透圧の透析液を流し込み、腹膜を介して水や溶質の移動を行う。これが腹膜透析の原理。

血液側と腹膜透析液側が浸透圧差が時間経過とともに無くなりますので、そこで水の移動は0となります。

腹膜透析では使用する透析液の浸透圧によって除水量が決まる

血液透析の除水は浸透圧じゃなく限外濾過

血液透析では、透析コンソール内部の除水ポンプで強制的に除水を行います。
浸透圧差があってもなくても定量除水が可能なのは、水の移動が浸透圧ではなく限外濾過で行われるからです。

除水量を精密にコントロールするには、腹膜透析よりも血液透析が圧倒的に簡単です。

浸透圧の種類

浸透圧には種類があります。

  • 血漿浸透圧
  • 膠質浸透圧

血漿浸透圧

血中の浸透圧物質で規定されます。
ナトリウムNaと尿素窒素BUN、グルコースGluを用いて簡単に計算できます。

血漿浸透圧 = 2 × Na + Glu/18 + BUN/2.8

透析前の患者であれば大体300mOsm/L以上となっていますが、透析治療の経過とともにBUNが低下していくため、血漿浸透圧は下がる傾向となります。

膠質浸透圧

別名コロイド浸透圧と呼ばれる、主にアルブミンが関与する浸透圧。
アルブミンには水を保持する能力があります。

Albの水保持能力は15〜25mL/1g

低栄養患者で足が浮腫み、それなのに血圧低下で除水が進められない原因はコレ。

低栄養でAlb低下
» 血中の水保持能力低下
» 細胞内に水が流入し浮腫
» リフィリング能低下により血漿水分量低下
» 血圧低下性ショックなどの諸症状発現

透析におけるプラズマリフィリング

プラズマリフィリング(血漿再充填)があるからこそ、除水を進めても血液量の過剰な減少や危険な血圧低下を起こさずに透析治療が行えます。
プラズマリフィリングによる水の移動には二つの理由があります。

  • 静水圧の低下
  • 膠質浸透圧による水の移動

静水圧と膠質浸透圧は平常時にはバランスが保たれている

静水圧、あんまり聞き慣れていない方も多いのでは?簡単に言えば【血漿と細胞間質で押し合う力】のコト。

平常時の静水圧は【血漿側>間質液側】となっているため、血漿→間質液側に水の移動が行われています。
一方膠質浸透圧(血管内に水を保持する力)で間質液側→血漿に水の移動を促しています。

静水圧と膠質浸透圧の両者のバランスで血漿水分が保たれている

透析中は膠質浸透圧優位となる

透析治療で除水が行われている時のバランスはどうなるでしょう?

除水により血漿水分が減少すると、静水圧は間質液側へ押し出す力が弱くなります
膠質浸透圧はアルブミン濃縮によりややUP傾向(水を血中へ引き込む力が上昇)

透析中は膠質浸透圧優位となりプラズマリフィリング(血漿再充填)が促進

浸透圧が悪さする透析中の病態

透析中に浸透圧が下がってしまうのは仕方がないコト。
血漿浸透圧が下がることで起きる主な病態についても覚えておきましょう。

不均衡症候群

透析導入期によく見られる、頭痛や吐き気などを伴う不均衡症候群。
血液側の浸透圧低下が早く、脳内の浸透圧の減少は比較的遅い。
ここに浸透圧差が生まれ、脳内に水が移動し一過性の脳浮腫を起こすことが原因で発生します。
不均衡症候群の作用機序

これを防ぐためには、血漿浸透圧の減少を緩やかにするため、低効率を目指した緩やかな透析が重要。

不均衡症状が認められる場合には、血流や膜種類・サイズなどを変更し効率を下げて上げることが重要

眼圧上昇症例には注意

ほとんどの透析症例では眼圧(目の硬さ)に大きな変化がないと考えられています。
ですが一部の症例では眼圧上昇が認められており、房水路障害を持つ緑内障患者などでは失明リスクなどが上がるので注意が必要。

眼圧上昇と不均衡症候群の発現機序は同じ理由。

透析により血漿浸透圧低下
» 血液房水関門の存在により眼内浸透圧は血漿浸透圧に遅れて低下する
» 血液中の水分が眼内に引き込まれて眼圧上昇

これももちろん血漿浸透圧を急激でなく緩やかに下げる透析治療を検討する必要がありますね。

透析における浸透圧の考え方まとめ

浸透圧の考え方やリフィリングの原理、水の移動による合併症について解説しました。

わかった気がするMEクン

わかった気がするMEクン「浸透圧、メッチャ奥が深いな・・・透析の全ての基本だってことは分かったけど、一つ一つの症例でしっかり浸透圧のことも考えていかなければならないんだね。
低栄養患者が浮腫む理由も浸透圧が関与してたんだね。ってことは低栄養を改善しなきゃ浮腫の改善は難しいってことかな?」

不均衡症候群や眼圧上昇症例に関しては、浸透圧を理解することである程度防げる話ではあります。

ですが浸透圧を単独で理解しても何の意味もないのが正直なトコロ。
低栄養患者の透析治療は非常に難しいです。

  • 浸透圧でリフィリングの理解
  • 低栄養の改善
  • BV計を使った循環血液量のモニタリング

この3つを意識し、低栄養患者の病態改善に努めることで、生命予後の向上に努めていくことが非常に大事ですね。

低栄養状態の改善については「» 【MIA症候群対策】AN69膜の積層型H12はマジで有用」で解説。
BV計については「» 日機装社製BV計は安全な透析をする上で最適!DW設定・リフィリング・再循環測定もOK」で解説しています。