透析の「痩せ」は危険!MIA症候群を制するものが透析を制す
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困った透析新人MEクン「透析患者の栄養管理ってめっちゃ難しくない?指導方法が全然よくわからないよ。
気をつけるポイントについて教えてくれない?」
透析患者さん、水分管理や食事管理めっちゃ大変なんだよ。
栄養指導とかとっても重要だけど、患者さんの生活を尊重することが大事。
ポイントは「痩せ」を如何に防ぐか?
透析患者の「痩せ」は死亡リスクに直結します。
本記事の内容
- 透析患者はなぜ痩せる?
- MIA症候群を理解することが「痩せ」防止への第一歩
- 「痩せ」を防ぐ重要なポイント
このきじのもくじ
透析患者はなぜ痩せる?
冒頭の「痩せ」に気をつけるというポイント。
なぜ「痩せ」が重要なのか、解説していきます。
「痩せ」と死亡リスクの関係
私たち健常人のBMIは22が理想値と言われています。これはBMI22を基準に高くても低くても死亡リスクが上がるからです。
では透析患者においてはどうでしょう?
我が国の慢性透析療法の現況2010 一部改変
- 痩せていたら死亡リスクが高い
- 太っていても死亡リスクは上がらない
そう、太り過ぎは死亡リスクが上がりません。でも水太りはダメ!絶対。
適切な食事量と適切な運動量でDWがアップする分には死亡リスクが上がりませんってコト。
では透析患者のBMI分布はどうなっているでしょうか?
我が国の慢性透析療法の現況2008 一部改変
このように透析患者の7割は「痩せ」状態です。
「痩せ」で死亡リスクは上がる。なのに透析患者の7割は「痩せ」状態
透析患者は痩せるリスクと共にある
「痩せ」の死亡リスクが上がるのは明白なのに、透析患者はなぜ「痩せ」てしまうのか?
これには以下の病態が密接に関連します。
- PEM(蛋白エネルギー栄養不良)
- PEW(蛋白エネルギー消耗)
この2つの病態を掘り下げます。
PEW(ProteinEnergyMalnutrition)
透析患者は必要な蛋白・エネルギーが摂取できずに栄養障害が起きている状態。
蛋白・エネルギーを必要な量だけ摂取できているのでしょうか?
蛋白異化率nPCRとエネルギー摂取量は相関します。
透析患者の7割は十分な蛋白摂取をできていないことが明らかですね。
nPCRと死亡リスクの関係も見て見ましょう。
我が国の慢性透析療法の現況2008 一部改変
蛋白摂取量が低いと死亡リスクが高いが、透析患者の7割は蛋白摂取が満足に出来ていない
PEM(ProteinEnergyWasting)
PEM(蛋白エネルギー消耗)とは、十分な食事摂取ができているのに栄養障害が起きている状態のコト。
透析患者のエネルギー代謝がどうなっているでしょうか。
- 透析日のエネルギー代謝は健常人より1〜2割亢進
- 非透析日のエネルギー代謝は健常人より1割亢進
透析患者のエネルギー消耗が進む理由はたくさんあります。
代謝性アシドーシス
貧血による心拍数・呼吸数増加 etc
PEWとPEMの病態により、透析患者は蛋白が十分に取れず、摂取しても消耗してしまう状態。
だから透析患者はどんどん痩せていく
「痩せ」を評価するにはGNRI
GNRIは栄養指標でAlbと体重によって規定されます。
GNRI=14.89×Alb+41.7×DW/IBW
BMIが22となる体重
DW/IBW>1ならばDW/IBW=1として計算する(太り過ぎはGNRIが上がっていかない)
GNRIと慢性炎症は相関することがわかっています。
透析会誌45(10) 937〜945、2012より抜粋
GNRIが低い=痩せている と言うことなので
GNRIと死亡リスクは相関する
GNRIを上げるにはどうしたらいいでしょう?
Albを上げる、体重を上げる、式を見ればそれは明らかですが・・・
ここでは栄養評価と運動評価が重要となります。
栄養評価はnPCRやAlbでできますが、運動を採血結果から評価するときにはクレアチニン産生速度%CGRを使います。
%CGRは筋肉量と運動量を反映する
我が国の慢性透析療法の現況2008 一部改変
%CGRと死亡リスクも密接に相関します。Crは簡単に言えば筋肉を動かした時に増える老廃物。
運動をしっかりすれば%CGRは上がりますので、運動をするってとっても重要。
MIA症候群を理解することが「痩せ」防止への第一歩
透析患者が痩せていると言うことは理解できましたか?
「痩せ」と「慢性炎症」を合併する病態はMIA症候群と言われています。
Inflammation:炎症
Atherosclerosis:動脈硬化性疾患
低栄養と炎症を合併していると、動脈硬化性疾患を効率に発症
低栄養・慢性炎症・動脈硬化性疾患を合併した状態は、CKD患者の予後に重大な悪影響を及ぼします。
透析患者は慢性炎症状態
透析患者の慢性炎症リスク、ざっくり言えば透析治療それ自体が炎症のリスク。
生体適合性の高い材料を使用
MEとしてやれることは少なくありませんが、それでもやっぱり透析患者は慢性炎症状態。
透析患者は低栄養リスクが高い
- 勘違いの食事制限
- PEW・PEM
こんなことが原因で、透析患者は低栄養リスクがめちゃくちゃ高い。
MIA症候群に対抗する武器【積層型AN69ヘモダイアライザ】
積層型AN69知ってますか?
古い透析材料ではありますが、MIA対策にめっちゃ有用。
積層型のざっくり特徴
- 陰性荷電はAlbを跳ね返す(膜に吸着されない)
- 炎症性サイトカインを吸着
Albが下がるリスクと炎症リスクにダブルで対応できる膜。
これを使いこなすこと、MIA症候群に対する武器となります。
【MIA症候群対策】AN69膜の積層型H12はマジで有用
H12積層型ヘモダイアライザーAN69膜はMIA症候群に対するリーサルウェポン。
低栄養や慢性炎症病態に対し、AN69膜ゆえの特性により素晴らしい効果を発揮。
高齢透析患者の低栄養の改善は、積層型がないと対応できないものばっかり。しっかり使いこなしましょう。
「痩せ」を防ぐ重要なポイント
「痩せ」の対応をまとめていきます。
適切な透析条件を
透析液の清浄化や積層型AN69の採用で、治療による炎症リスクを抑えることが大事です。
医療従事者の一言が患者の『痩せ』を惹起する
「Pが高いよ、気をつけて!」
こんなアバウトな患者指導をするスタッフ、まだたくさんいます。
Pが高いのは確かに問題、でもリンが高い食事って蛋白質も豊富。
高蛋白・高熱量、ここをしっかりしておかないと、透析の「痩せ」は悪化します。
栄養指導・内服管理・透析条件、トータルでアセスメント
「痩せ」の原因は私たちの間違った認識が原因
「Kt/Vが低いから条件上げます」こんな透析条件の変更をする技士がまだたくさんいます。
効率を上げることで、毒素だけでなくアミノ酸など重要な栄養成分も抜けること、しっかり認識して!
- よく食べている人の透析条件はガンガン上げる
- 低栄養患者はマイルドに、材料をしっかり考える
透析効率だけ見て条件上げる、こんなの小学生でもできます。
しっかり食べてしっかり透析。MIA病態には積層型
MIA症候群についてしっかり認識しておきましょう。
結論

なんとなく分かった透析新人MEクン「なるほど、痩せが死亡リスクを上げることがわかった。食べすぎって指導は下手をすると患者を短命にさせる原因になっているのかもしれないね!
栄養と運動と内服と透析条件、これをトータルで見ることができるようになる必要がありそうだね」
透析条件だけ見てればそれでいい、そんな技士スタイルはもう過去の話だと思います。
患者生活をトータルでアセスメントできる人材こそ、本当に求められている透析従事スタッフ像だと思いますよ。