長時間透析は生命予後の観点から超有用!気になるメリットデメリットを完全解説

透析

困った人

新人透析MEクン「長時間透析って患者さんの生命予後にとってはメリットがすごく大きいと思うんだけど、あんまり普及しないのはなんで?デメリットって何があるのかな?」

こんな疑問に答えていきます。

長時間透析は病院にとっても患者にとってもメリットの大きい治療
ですが既存の透析施設に長時間透析やオーバーナイト透析の導入は非常に難しいのも事実。

この記事では長時間透析のメリットやデメリットを網羅的に解説していきます。

長時間透析のメリットは生命予後の改善

患者にとって長くベッド上での治療を行うことは、非常にストレスのかかることは事実です。
しかし長時間透析は有意に生命予後の改善に寄与するデータも多数報告されており、MEとしては透析時間を最重要視すべき部分だと考えます。

2007年の透析医学会から出された報告を見てみましょう。

透析時間 相対危険率
3時間 1.862
3.5時間 1.285
4時間 1.000
4.5時間 0.708
5時間以上 0.653

生命予後に対する相対危険率は、現在でも日本の透析のベースである4時間透析を1.000とした場合、有意に透析時間を長くすることで危険率が下がっていることがわかります。

除水負荷の軽減

プラズマリフィリングの兼ね合いもあり、1時間当たりの除水量が多ければ多いほど、安全な透析の施行は難しいですよね。

同じ除水量3kg/1sessionで考えた場合
4時間透析では0.75L/Hr
5時間透析では0.6L/Hr

除水速度が遅ければ遅いほど、除水に対する身体への負荷が下がることは明白

プラズマリフィリングに関しては「» 浸透圧って難しい?透析におけるプラズマリフィリングを理解しておこう」で解説しています。

栄養状態改善

長時間透析によってカリウムやリンなどの除去効率が上がるため、カリウムやリンの摂取制限が緩和されます。
透析後の毒素濃度は明らかに改善する(健常人に近づく)ため、より健康な生活を送ることが可能となります。

食事制限の緩和は言うまでもなく、尿毒症性物質の除去効率が上がる為味覚異常などの症状も緩和し食欲増進。
透析の「痩せ」の原因の一つであるPEM状態を改善させることが可能。

MIA症候群やサルコペニア・フレイルの予防につながる

透析の痩せについて詳しくは「» 透析の「痩せ」は危険!MIA症候群を制するものが透析を制す」で解説しています。

合併症リスク軽減

長時間透析による生命予後の改善は結局これに尽きます。

  • 除水量減少による心負荷軽減
  • DW達成が容易となることによる心負荷軽減
  • 血圧コントロールが容易
  • 尿毒症性物質の積極的除去による造血阻害因子の除去
  • 食欲増進に伴う栄養状態改善
  • β2MG除去効率UPによる透析アミロイド症の合併頻度減少

挙げればキリがありませんが、各種合併症の軽減により、内服薬・注射の減量も可能。

患者にとってだけでなく、医療経済にとってもメリットのある治療であると言えます。

オーバーナイト透析による時間の有効活用

就業しながら透析を受けている方、たくさんいらっしゃいます。
職場の理解が得られるような会社であれば、透析日は短時間勤務とするフレックスなどが可能なところもありますが・・・
中小企業ではそんな理解のある職場は稀だと思います。

オーバーナイト透析(深夜に寝ながら透析)を選択することで、時間に縛られずに仕事を行うことができる

オーバーナイト透析はメッチャ素晴らしい治療ですが、実施している施設はそもそも多くありません。住んでいる場所や働いている場所によっては選択できないことも多いです。

長時間透析のデメリットは意外と多い?

長時間透析のデメリットについても見ていきます。

低栄養のリスクに気を付けて(低K血症・低P血症)

溶質の除去効率が上がりますので、ほとんどの血液データが通常の4時間透析に比べて低くなります。これっていいことでしょうか?

高効率透析で注意が必要なのは低K血症

カリウムはご存知の通り、高くても低くても不整脈や最悪の場合心停止を招く物質です。
意外と透析後に不整脈が出ている人は多いです。透析後のカリウム値をチェックし、低K血症であればカリウム補充療法も視野に入れる必要があります。

オーバーナイト時の洗浄問題

これはMEとしては頭を悩ませる問題です。
1台の供給装置(セントラル・RO装置)を使った配管で深夜帯まで含めた透析を行うことで、夜間に行っている配管洗浄等が不可能となります。

そんなことを繰り返していたらあっという間に配管は炭酸カルシウム沈着でバッキバキ

オーバーナイト用の専用配管を作るのが理想ではありますが、新規開院時でもないと難しいのも事実。
複数台のセントラルによるオーバーナイト透析の運用や個人用透析装置を使った工夫が必要となります。

時間的制約と運動不足

長時間透析ではベッドにいる時間が長時間となるがゆえに、患者個人の時間の制約があったり運動不足となりがち。
メリットとのトレードオフということだけ考えれば全然アリな治療ですが、我々医療従事者がいかにメリットを説いたところで仕方ありません。

長時間透析に対する患者の理解が一番重要

運動不足に関しては、透析中のベッド上でのエルゴメータなどの運動もアリですね。

長時間透析まとめ

わかった気がするMEクン

わかった気がするMEクン「長時間透析が生命予後にいい影響を与えるのは間違いなさそうね。
でも確かに、長くベッド上にいたくないっていう患者さんの気持ちも分かる。ボクたちがいいと思ってもそれを患者さんに理解してもらえなければ何の意味もないんだね。」

人件費や設備費を考えると、深夜に行うオーバーナイト透析にしても通常の時間帯の長時間透析にしても一時的にはコスト負担が増してしまうため、手が出しにくいのは事実。
長時間透析を行うとベッドコントロール問題にも間違いなく直面しますし。

ですが患者を元気に長生きさせることで病院収支を増やすことができるのも事実ですよね。

いい透析を提供するのって、「患者を元気に長生きさせる」これが目的じゃないですか?そう言った意味ではイニシャルコストもランニングコストもやや増えてしまうとは思いますが、長時間透析を採用する意義は間違いなくあると思います。