透析掻痒症の3つの原因と対策 意外と盲点?痒みと死亡率の関係性
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悩める新人MEクン「透析患者さんって痒み訴える人多くない?何でこんなに掻痒症な人が多いんだろう?」
こんな疑問に答えていきます。
血液透析または腹膜透析の患者の50〜90%が掻痒症を認めると言われています。
要するに半数以上の患者は、何かしらの痒みで困っているということ。
痒みの原因によって対処は様々ですが、今回は痒みの原因別に対応を考えていきましょう。
このきじのもくじ
意外と盲点?痒みと生存率は相関する
出典:Narita.I..et al kidney int.2006;69:1626-1632
たかが「痒み」と侮るなかれ。
痒みが軽度〜中等度の患者さんの生存率には差がありませんが、重度の患者さんの生命予後が悪いということが分かります。
痒みの症状を訴えている場合、その原因検索をしっかりと行い対処を行うことが大事です。
透析患者の掻痒症の原因は三つある
冒頭でお示しした通り、透析患者の半数以上は掻痒症を認めると言われています。
痒みの原因は大きく3つに分類されます。
- 腎不全・透析由来の異常
- 皮膚の乾燥を主体とする皮膚異常
- 内因性オピオイドの関与する中枢神経系痒み制御異常
患者さんに対して
「あなたの痒みの原因は◯◯です!」って言い切るのは非常に難しいです。原因が一つとは限りませんから。
ですが患者さんの訴えを傾聴し、全身の肌状態を観察することで、患者さんの掻痒症の原因をある程度推測することは可能だと思います。
大事なのは患者の訴えを傾聴する姿勢
これだけで患者さんは信頼してくれるんですよ。信頼されなければ本当に重要な情報が聞き出せないこともあります。
看護師?臨床工学技士?関係ないでしょう。患者が困ってるなら対応しましょう。
透析由来の掻痒症への対策はMEの腕の見せ所
私たちMEが積極的に掻痒症と向き合っていくためには、ここが一番重要でしょう
カルシウム・リンのバランスや二次性副甲状腺機能亢進症の管理
- エテルカルセチド塩酸塩(パーサビブ注)
- 活性型VitDの使用
- 適切な食事・内服管理
内服や注射は医師の指示?食事管理は栄養士?
看護師やMEが考えたっていいじゃないですか?医師にこちらから上申しましょう。
患者さんと一番長く過ごしているのは我々コメディカル。医師の回診時に拾いきれない情報を拾い上げて対応していくのが努めです。
透析条件の検討はMEの腕の見せ所
透析膜による補体活性の影響も見逃せませんので、BPAやPVPフリーのフィルタを使用することも検討しましょう。
β2MGが痒みの原因物質である可能性という論文も出てきていますので、透析では達成が難しいβ2MG除去率80%以上を目標にOnlineHDFの条件設定をしていきましょう。
β2-Microglobulin elicits itch-related responses in mice through the direct activation of primary afferent neurons expressing transient receptor potential vanilloid 1.
Eur J Pharmacol.2017 Sep 5;810:134-140. doi: 10.1016/j.ejphar.2017.07.007. Epub 2017 Jul 4.
皮膚の乾燥に対する対策はカラダキレイとか使おう
透析患者は、角層の水分保持機能は保たれているものの、恒常的に皮膚への水分供給が低下しており、これが角層水分量低下により皮膚の乾燥が起こりやすいと考えられています。
また、皮脂腺や汗腺が萎縮して、皮脂や汗の分泌が低下することにより皮脂膜が十分に形成、機能できなくなることも原因の一つとなります。
保湿剤やステロイドを使った治療やスキンケアをしっかり指導していく必要があります。
場合によってはプロである皮膚科専門医に相談しましょう。
ここで力を発揮するのが洗浄保湿ローションの【カラダキレイ】
これを使うことで肌状態を清潔に保ち、かつ保湿をすることが可能。医療現場や介護現場でも採用がめっちゃ増えてきています。
カラダキレイが安心して使える3つの理由【医療現場のエビデンス】
カラダキレイは医療現場でも使われる洗浄保湿ローション。そのエビデンスは確立されており、赤ちゃんやお子様、高齢者まで安心して使うことができます。
アルコール除菌系よりも肌に対する刺激は少なく、同等以上の洗浄効果に加え保湿効果まであり。
様々なシーンに活躍します。
中枢神経系痒み制御異常への対策は内服のコントロール
内因性オピオイドのβ-エンドルフィン等によるμ受容体の活性化は、かゆみの発現に関与していると考えられています。
出典:内因性オピオイドによるかゆみ誘発系
レミッチ製品情報HPより
内因性オピオイドの関与する中枢神経系痒み制御以上に対してナルフラフィン塩酸塩(レミッチ®)という薬があります。この薬はμ受容体と相反する薬理作用を示すことが多いκ受容体の活性化により痒みを抑制させる機序で、痒み制御に寄与します。(下図)
出典:内因性オピオイドによるかゆみ抑制系
レミッチ製品情報HPより
透析患者の「痒み」まとめ
透析患者の「痒み」とその対応について解説しました。

分かった新人MEクン「一言に痒みって言っても色々原因があるんだね。患者さんの訴えの傾聴と観察が大事って事がわかったよ。
OnlineHDFの条件設定もしっかりしないといけないんだね。そこを今度は教えてよ!」
たかが痒み、されど痒み
痒みが患者さんの生命予後を左右することは間違いありません。そのことを忘れずに透析条件などしっかり考えていきましょう。
次はOnlineHDFの原理やターゲットについて考えていきましょう。