在宅血液透析の患者要件とは?難しい条件なんて何もない
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困っている新人MEクン「ウチの病院の患者さんに『私は在宅血液透析できるの?』って聞かれたんだ。なんとなくだけど、その患者さんは俺の中では在宅血液透析に向いてると思う。実際どんな人が在宅血液透析に向いてるのかな?教えてくれ」
慢性維持透析患者は日本に30万人超いるのに、在宅で透析を行っている患者さんは1,000人にも満たない。
生命予後が良好になることは間違い無いのに、なぜ患者さんが増えないのでしょうか?
在宅血液透析HHDって?患者さんに知って欲しい治療法
在宅血液透析、ご存知ですか?
透析患者さんの生命予後を確実に改善する治療法なのに、余りにも知られていない。医療関係者のマインドブロックに原因があります。
『その日の汚れその日のうちに』これが在宅血液透析の真理です。
今回は「どんな患者さんがHHDに向いているの?」といったところにフォーカスを当てて解説していきます。
本記事の内容
- HHDの適応基準は?
- なぜ在宅血液透析患者が増えないのか?
このきじのもくじ
HHDの適応基準は?
治療の有用性は認められつつも全然増えていかないHHD患者人数。
さぞ難しい患者要件があるかと思いません?見ていきましょう。
日本透析医会のHHD患者基準は?適応10パターン
日本透析医会の在宅血液透析管理マニュアルによると、HHDの適応患者は以下の10項目を満たすこととあります。
- 本人の強い希望があること
- 介助者が確保され、同意していること
- 介助者以外の家族も協力的であること
- 教育訓練を受けることができること
- 教育訓練の内容を習得する能力があること
- 安定した維持透析が実施されていること
- 年齢は16〜60歳程度が望ましい
- 社会復帰の意思があること
- 透析を実施する部屋や材料の保管場所が家庭内に確保できること
うーん、項目が多くて分かりにくい。
スッキリさせると3つのパターンに
10項目、ちょっと分かりづらいかと思いますので簡単にまとめると・・・
- 本人および介助者の希望があり、在宅において透析実施が可能
- 教育訓練を受けることが出来る
- 16〜60歳程度で社会生活を変わらずに送りたい希望のある方
これらを深掘りしていきます。
本人および介助者の希望があり、在宅において透析実施が可能
「HHDをやりたい」この気持ちと、それを理解してくれる介助者がいること。
これが大前提であり真理。
本人だけでなく、在宅血液透析では介助者にも大きな負担がかかることは事実。
患者さんと介助者が助け合いながら治療していくことが必須となります。
HHDを可能にする建物条件とは?
- 上下水道が整備されていて、水道水圧力2kPa確保
- 単独電源20A
- 透析装置と個人用RO装置(1畳程度)と透析資材(およそ1ヶ月分)の保管場所
基本的に工事でなんとでもなる圧力と電源。
物品1ヶ月分を想定すると6畳程度が1部屋必要というイメージでOK。
賃貸住宅だと?
大家さんの許可を取る必要があります。
配管工事NGであれば、洗濯機の給水部を二股に分岐させて取水できます。
これなら工事がなくても配管を取り回すことが可能。その場合、透析中に洗濯はNGとなります。
教育訓練を受けることが出来る
病院でトラブルが起きたさいは、プロである私たちがチーム連携しながら対処にあたります。
ですが在宅においてはそうはいきません。
患者さんと介助者でトラブル対応できるよう、徹底的に教育訓練を行いますが、想定外のトラブルに見舞われることもあります。
- 抜針・出血事故
- 回路凝固トラブル
- 血圧低下・ショック
何かがあってからでは遅い。
トラブル対応も必要ですがトラブルに至らない安全な透析を行うため、病院側がしっかり教育環境を構築する必要があります。
教育訓練はもちろん介助者にも行います。
ショック時の対応
救急車を呼べること
この辺が分かれば問題ないと思います。
『在宅血液透析は自己責任の治療』
この意見には私は反対。
これって「何があっても自己責任だからね」って患者さんに丸投げしているだけじゃないですか。
16〜60歳程度で社会生活を変わらずに送りたい希望のある方
私は小児透析こそHHDを可能にすべきと思っていますので、16歳〜というのはちょっとアレです。
小学生が理解できるか?って聞かれたらそれまでですが、中学生くらいでしたら理解力は問題ありませんし、病院判断ってところにはなりますが可能になるべきだと思います。
学校生活をしっかり送らせたいと思う親心。自分の子供が透析になってしまうのだったら、絶対に在宅透析を行います。
『HHDやりたい』って気持ち、これは今の生活を変えたくない、壊したくないって気持ちが強いからこそだと思います。
そこに年齢は関係ないと思います。年齢基準に関しては柔軟に対応すべきでしょう。
私が考える在宅血液透析に向いている患者像
施設における血液透析だけを『常識』と捉えない人。
受け身の治療をしているだけでは多分HHDのことは知り得ません。
自分でHHDのことを調べて医療従事者に聞いてこられた方はみんな、HHDに向いている患者さんだと思います。

ちょっと理解した新人MEクン「在宅血液透析の患者さんの要件ってあんまり高くないんだね。じゃぁなんで日本では在宅血液透析が流行らないんだろう?めっちゃいい治療なのにさ。」
本当ですよね。なぜ流行らないのか考えていきましょう。
なぜ在宅血液透析患者が増えないのか?
キッパリ言います。完全に病院側の都合です。
病院が在宅血液透析をやらないという判断であれば、その治療が如何に素晴らしくても、患者さんに周知されることはありません。
そもそも在宅血液透析を知らない医療従事者が多い
これ、めちゃくちゃ大問題。
医療従事者も今ある血液透析がスタンダードであり、他のことを調べようとしない。
自分の病院が行っていることが世間の普通って思っちゃう、医療従事者のマインドブロックって結構厄介なんですよね。
病院での在宅透析勉強会、請け負います(宣伝)
患者さん一人当たりの病院売り上げが減少するように見える
施設透析からHHDへの移行により、1患者当たりの医業収入は60%ほどとなると言われています。
ですが考えて見てください。
その後はほとんど人件費がかかることがありません。
透析病院の人件費率はおよそ50%
HHD移行後の1患者当たりの収益は施設透析より優位となります。
あとはどれだけ患者さんが元気で長生きできるか。考えるまでもありませんね。
収益が目減りするように見えても長期スパンでは経済的メリットが大きい
新規患者層の獲得が可能という宣伝効果もあると思います。HHD実施施設が今はまだあまりにも少なすぎますので。
結論

メッチャ理解できた新人MEクン「HHD患者が増えない理由、病院がそもそも知らせなければ患者さんはHHDのこと知ることは難しいんだね。うちの病院でHHDやって見たいな。患者さんがもっと元気に楽しく過ごすことができるなら、こんなにいいことはないよね!」
病院への在宅血液透析の導入、非常に大変です。
- 院内のHHDへの理解
- 教育環境構築
- サポート体制構築
ですが突然HHDが始まるわけではありません。
院内勉強会を通してスタッフの知識の共通化。
教育マニュアルやポスターなどを作って患者さんへの周知。
マニュアルに完成はありません。PDCAをガンガン回すことで、よりよりシステム構築に日々アップデートしていく必要があります。
こんな楽しいこと、他にありますか?
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