透析量HDP vs Kt/Vを徹底考察!生命予後に有用な指標はどっち?
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新人透析MEクン「透析効率の指標でKt/Vってあるじゃん?あれで評価すれば良いってセンパイに言われたんだ。
Kt/Vだけ評価すれば良いならめっちゃ簡単だと思うんだけど注意するべきことってある?
HDPとの比較も知りたいな。どっちが有用とかあるの?」
昔からお世話になっているKt/V。
今でも臨床で一番使われている透析量の評価方法ですね。
この記事ではKt/Vの概要や弱点、評価のポイントを深掘り。
HDPについての概要は以下の記事でサラッと紹介していますが、これもガッツリ深掘りしていきます。
在宅血液透析HHDって?患者さんに知って欲しい治療法
在宅血液透析、ご存知ですか?
透析患者さんの生命予後を確実に改善する治療法なのに、余りにも知られていない。医療関係者のマインドブロックに原因があります。
『その日の汚れその日のうちに』これが在宅血液透析の真理です。
この記事で分かるコト
- 透析効率HDPは生命予後を反映する
- 透析効率Kt/Vは1回の透析の効率を評価する
このきじのもくじ
透析効率HDPは生命予後を反映する
2002年にスクリブナー博士によって提唱されたHDP。
HemoDialysisProductが略されてHDPと呼ばれています。
HDPの計算式
HDP=(透析時間)×(週透析回数)×(週透析回数)
透析時間よりも回数の方が重要と言う指標ですね。
HDPと生命予後の相関
少し古いデータにはなりますが、HDP36と72の生存率を比較したデータを紹介。
HDP36と72を比較した結果、50%生存率には5年もの隔たりがあるという結果が分かっています。
HDPが高いってつまりどういう状態?
HDPが高い方が生命予後が良いのはわかりました。
こんな単純な指標のHDPが生命予後とリンクするのはナゼ?
HDP向上の決め手は週の透析回数を増やすコト
ではHDPと体の中の水分量を見ていきましょう。
週3回4時間のスタンダードな透析と、週6回2時間のような在宅の短時間頻回透析を比較してみます。
週3回4時間 HDP36

週6回2時間 HDP72

HDPの高い方が、体内水分量が低い状態をキープできています。
HDP36では体内に水分が溜まっている時間がとても長い。
これが慢性的な心負荷につながっているため、HDPが低い方が死亡率が高い結果となるわけです。
これは体水分量だけでなく毒素にも同じことが言えます。
生命予後を規定するのは
「透析でどれだけ水分や毒素を抜いたか」ではなく
「いかに体水分量や毒素が少ない状態を保てるか」
透析効率Kt/Vは一回の透析の効率を評価する
透析効率評価の基本中の基本、Kt/V。
これはどういった指標なのか深掘りしていきます。
Kt/Vとは一体?
Kt/Vは1回の透析の効率のコト
- K:尿素のクリアランス
- t:透析時間
- V:体液量
Kt/Vってただの数式。
複雑な計算式で算出するKt/Vもありますが、概念はとても単純。
Kt/Vを上げるにはKとtを増やす
Kt/Vと生命予後
一般的にKt/Vが低いほど死亡リスクが上がることは明らかになっています。
グラフを見ると、Kt/Vは高ければ高いほど生命予後が良さそうですね。
では本当に高ければ良いのでしょうか?
Kt/Vの弱点と評価のポイント
1回の効率の指標であるということが最大の弱点。
極端な比較とはなりますが
①週1回5時間
②週3回5時間
両者の透析量Kt/Vは同等な値に収束します。
でも透析として良好なのは②だと思いませんか?
体液量(V)で除しているため、体格差がもろに数値に現れる。
同一の条件ですと太った患者さんの方がKt/Vは低く出ます。
Kt/Vは患者同士の比較には使えない
Kt/Vが役立つシーンとは?
患者同士の比較に向かないKt/V。
ですが個々の患者の時系列で追ってみると重大なコトがわかったりします。
採血日 | Kt/V |
2020年1月 | 1.68 |
2020年2月 | 1.76 |
2020年3月 | 1.43 |
2020年4月 | 1.41 |
2020年1月から4月までのKt/Vの推移をみてみると、3月から効率がガクッと落ちたことがわかります。
透析条件の変更や体格の変化(そもそもそんなに一気に体格は変化しませんが)がないとすれば、透析効率が下がる何かがあるということが分かりますね。
Kt/Vが落ちたらシャントのチェック
再循環や実血流量の減少で、CL-Gap(クリアランスギャップ)が存在する可能性が極めて高いです。
時系列でデータを追うことで、kt/Vは非常に役に立つ指標となるワケ。
結論

わかった気がするMEクン「なるほどね。HDPとKt/V、そもそも評価するポイントが違うんだ。
週2回の患者さんなんかはHDPの事をちゃんと説明する事で、週3回やってあげる必要性があるわけだね。
1回の透析量評価は時系列で見る事をしっかり心がけるね」
HDPとKt/V、単純に比較できるものではないことがわかりましたか?
各々透析にとっては非常に重要ではありますが、効率を上げるだけでなく栄養状態をしっかり評価することも大事ですよ。
栄養も絡めた透析の評価については今後記事にしていきます。