日機装社製BV計は安全な透析をする上で最適!DW設定・リフィリング・再循環測定もOK
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困った新人MEクン「BV計?を使うことになったんだけど、循環血液量をモニタリングすることでどういう事がわかるの?詳しく教えて」
こんな疑問に答えていきます。
BV計(循環血液量モニタ)使っていますか?
現状は透析コンソールのオプション機能であるため、病院によってはついていないところも多いかと思います。
「安全で無侵襲な透析」を行う上で非常に有用なデバイスです。BV波形の意味をしっかり理解して持っている施設はしっかり使いこなしましょう。
B
V計がついていない施設のスタッフの方、追加コストをかけてでも入れる意義はあると思います。ちょっと検討してみてください。
私は日機装社製BV計を使用することが多いため、日機装BV計の説明となってしまいますことをご了承ください。
このきじのもくじ
BV計とは?これがあると何ができるの?
BloodVolume計(日機装社製BVモニタ)では経時的な循環血液量の減少(ΔBV)をモニタリング可能。
BV(BloodVolume)とは血管内のトータル血液量(循環血液量)を指します。
循環血液量の減少と血圧低下には密接な関連があり、波形を理解することで「安全な透析」を行う事ができます。しっかりみていきましょう。
BV計でリフィリングを推測する
除水により循環血液量が減少すると、血管外にあった余剰水分 (組織間液)が血管内に移動します。
これをプラズマリフィリング(血漿再充填)と言います。
リフィリングの速度は、体格や体内の水分量によって個人差がありますが、DWに近づくにつれて余剰水分が少なくなるために、リフィリング速度は遅くなる傾向となります。
透析における循環血液量の変化を規定する因子
血液透析での循環血液量の変化は以下の2点の差で決定されます。
- 除水による循環血液量の減少
- プラズマリフィリングによる血漿の再充填
「除水速度>リフィリング速度」であることが多いため一般的には経時的に循環血液量が減少していきます。
循環血液量が少なくなるに連れて血圧低下や下肢攣れなど諸症状が出現する可能性が高まります。
BV計ではこの循環血液量の変化率を経時的にモニタリングすることができ、血圧低下を未然に防ぐことや、DWの決定に役立てることができます。
BV計の正常の波形グラフ
BV波形は横軸に透析時間、縦軸に△BV(循環血液量減少率)を取ったグラフで示されます。
患者毎に個人差があるため、一人一人の患者の測定を何度も行い、個々の危険ポイントの把握を行うことが大事です。
BV計の危険な波形グラフ
一般的に循環血液量が-15%を下回ると血圧低下などの諸症状が現れやすいと言われています。
上図のような波形傾向であると注意が必要。というか対処が必要です。
患者さん、透析に従事しているみなさん、経験がある方が多いと思いますが、血圧低下によるショック症状は突然来ますよね。
さっきまで血圧150あった患者さんが5分後にショック状態で血圧測定不能なんてことも稀にあります。
血圧測定って大体の施設が1時間に1回、多くて2回くらいしか測定してませんので、血圧モニタリングだけですと、測定と測定の間の時間帯のケアが非常に難しいです。
BV計を導入することにより、血液量の経時変化をモニタリングができるため、より安全な透析を実施することが可能となるわけです。
BV計の活用シーン
循環血液量をモニタリングする事で、臨床においてはどのように活用できるでしょうか?
- ドライウェイト(DW)の推定
- 再循環測定
- 長時間透析・在宅血液透析への活用
各々を深掘りしていきます。
DWの推定へのBV波形の活用
このBV波形からわかることはなんでしょう?
- DWが甘い(DWを下げる必要がある)
- DWが適正
- DWがきつい(DWを上げる必要がある)
心機能や自律神経系、動脈硬化の度合いにより個人差はありますが、循環血液量は-15%を下回ると血圧低下の危険性があり注意が必要。
逆に-10%に届かなければ、体内の水分量にはある程度余裕があると考えられますので、DWを下げる必要性を考慮しなければなりません。
心不全のリスクを下げるためには、DWが甘めのままっていうのも結構問題。
適切な除水速度の設定もBV波形を使えるぞ
「透析後半に血圧が下がったり下肢攣れするからDWをUP」
こんな指示結構多くないですか?
間違ってはいないですが、正解とも言い切れません。
血圧や症状だけをみているとこんなことになりがちですが・・・
透析中の血圧低下・下肢攣れなどの2大原因
- DWがきつい
- 除水速度が速すぎる
この両者は除水停止時のBV波形の変化から分かります。
この波形から見て取れる事はなんでしょう?①の原因は再循環、次の項で解説します。
②のBV波形は除水速度が速すぎる事が問題
②の波形は除水を止めた後にリフィリングにより循環血液量の増加が見て取れます。
すなわち細胞内には水分の余裕があり、%BVが下がったからと言ってDWがきついとは言えません。
リフィリング速度<除水速度のための%BV減少
それによる血圧低下であり、除水速度が速すぎる事が原因であるといえますね。
③のBV波形はDWがきつい事が原因
③の波形は除水を止めた後も循環血液量が不変。要するに細胞内や組織間液などに水分の余裕がなくリフィリングが行われていないと判断できます。
DWがきつい事が問題である事がわかります。
リフィリング速度は人によって、体水分の余裕によって様々ではありますが、BV計でモニタリングする事で原因の切り分けをする事が可能。
BV計によるシャント再循環の測定
このBV波形から見た時に①のような波形を示した場合、シャントの再循環が疑われます。
日機装BV計において、シャントの再循環測定が可能。
再循環測定はざっくりこんなカンジ。
- 機械的に過除水をかけて血液にマーキング
- シャント血にマーキングした濃縮血液が流れてくるかBVで測定
- 再循環率の算出
簡単に再循環測定が透析中にできますので、定期的に測定しておくのも大事ですね。
オーバーナイト透析や在宅血液透析への活用
もちろん通常の透析においてもBV計はメッチャ有用。
ですがオーバーナイト透析に代表される長時間透析や、在宅血液透析でも効果を発揮。
血圧測定って、患者さんにとっては結構煩わしかったりしますよね。
特にオーバーナイト透析などで寝ながら透析ですと、血圧測定のたびに起きてしまったり・・・
在宅血液透析では透析中の血圧低下などの症状は超危険。血圧が下がる前に対処が必要。
BV計を使うことで無侵襲なバイタル観察・早め早めの対応が可能
BV計まとめ
BV計の波形の見方や活用法について解説しました。

分かった新人MEクン「循環血液量のモニタリングって、体水分の推定にも使えるし、具合が悪くなるのを未然に防ぐのにチョー重要なんだね。
この機能、なんでオプションなんだろう?標準装備すべきじゃね?」
その通り、標準装備すべき機能だと思います。
正直メーカーは「より安全に透析するためのデバイス」をオプションにしすぎです。
BV波形、測定しているだけでは意味がありません。
患者個々の危険ポイントの把握が一番重要だと思います。しっかり波形の意味を理解して除水やDWをコントロールしていきましょう。
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